今年に入って、『ぷよぷよ』シリーズがJeSU(日本eスポーツ連合)認定タイトルに指定され、セガ社主催の賞金付き大会が定期的に開催される運びとなった。2018年はまさに“ぷよぷよesports元年”といえる年だろう。

そこで戦技研では、誕生したばかりのぷよぷよプロプレイヤーの中から、プロ化以降積極的に情報発信を行っているlive氏にインタビューを実施した。

プロプレイヤーは何を思い、ぷよぷよと自身の将来をどう描くのか。そして、ユーザーコミュニティはどう変わっていくのか。大学ぷよサークルとして、競技化後のぷよぷよシーンの展望を伺った。

聞き手、撮影:Ryude、aojil
文:Ryude


公式大会とコミュニティ主催大会

――まずはぷよぷよチャンピオンシップ【※】入賞おめでとうございます。すごく盛り上がったようですが、前回と違いはありましたか。

live氏:
そうですね。回数ごとにちょっとずつ良くなってます。MCさんとか、大会の形式とかも、前回の反省点を生かして、出来る限り見栄え良く盛り上がるように考えていらっしゃるなと感じました。次回も同じ会場だろうと思うんですけれど、また課題点として見つかったところは直していくんじゃないでしょうか。

近々で200人規模の大会は最大じゃないかと思いますし、そういう大きい大会が出来るようになって、まずは良かったねというところです。さらにこれを広げていくにはどうすればいいかは、また今後考えていかないといけない部分ですね。

※「ぷよぷよチャンピオンシップ」:2018年6月3日に第2回が開催されたセガ公式の定期プロ大会。live氏は3位に入賞した。あわせてプロライセンス獲得を懸けたプロ・アマ混合大会「ぷよぷよカップ」も同日開催された。結果の詳細や今後の開催予定はぷよキャンeスポーツページにて。

――今回の大会を受けて、改善して欲しいところはありましたか。

live氏:
実況解説に関してのところが多いですね。具体的には、専門用語の使い方です。もちろん用語を使わないで解説することも可能なんですけど、ずっとそれだと見てる側も知識がつかない。ある程度は用語を盛り込むことでどんどん覚えてもらって、興味を持ってもらうような実況解説が必要になってくるのかなと。

――やっぱり用語を知っていると嬉しいんですよね。

live氏:
そうそう。あ、これ知ってるよ、ってなるのが絶対に楽しいと思うので、ちょっとずつ覚えていってもらいたいという気持ちがあります。まずは簡単なところからですね。

非公式大会の“強み”

――大会についてのお話になったので、コミュニティ主催大会についてもお聞きしたいと思います。まず、公式大会と非公式大会の違いはどのようなところだとお考えですか。

live氏:
今の所、公式大会は大きな事ができるじゃないですか。企業が主催して、大きなスポンサーを付けて、大々的に宣伝できるので。多くの人に見てもらうための、窓口になる大会だと思うんですね。

対して非公式大会は僕らユーザーが自由にできる大会なので、例えば100先【※】の大会がしたいといったら、スケジュールを組んで開催できますよね。公式大会を最初の取っ掛かりとして、コアなユーザーは、自分たちで自由にやる大会を作るような、それぞれの思う道に進んでもらう形が、とりあえずは良いのではないかと想定しています。

※100先:100本先取のこと。数時間におよぶ長期戦となり、スタミナが試される。

――選手に近いところでルールを設定できるので、選手が望むことは非公式大会のほうが充実させやすいですよね。

live氏:
よく言われるのは本数の問題ですよね。実力差を出すために公式大会の二本先取【※】では足りないんじゃないかという意見もあるんですが、一日で大量の人数が来て、限られたスケジュールでこなすことを考えるとどうしてもあの本数になってしまうと。

そこで満足できない人は10本先取、50本先取の大会をやろうとなりますし、そのために色々と物事を考えられるようになるじゃないですか。そういう自分で考えて行動するみたいな、非公式のエネルギーというのは、多分公式も大切にしたいと思っているでしょうし、今後はうまくそういったエネルギーが作用すればな、と思っています。

※公式大会のルール:2本先取の試合を1セットとし、2セット先取とする。最短で4本取れば決着する。

――プロの大会を受けて、我々も大会を主催【※】する身として、お互いに共鳴しあっていくといいなと考えているのですが。

live氏:
あまり公式の大会がどうだからと萎縮しないで自由にやってもらっていいと思います。僕の感覚だと、戦技研の大会って一番公式の大会に近いなって思っているんですよ。学祭ということで、一般の方が流入してくる中でどういうふうに見せるかというところに毎年主眼をおいていますよね。実況解説に関しても本当に一般の方にわかるようにやっているなという印象を受けているので、そういうところはお手本になるというか、まあ公式大会のお手本になるというのも変なんですけど(笑)。

※戦技研の大会:毎年早稲田大学の学園祭にて開催している大会「早大ぷよマスターズ」。去年で9回目を数える。参加観覧は自由で、来場者は1000人を超える。

――実況解説、MCの技術は、今回のぷよぷよチャンピオンシップのようにとても重要で、かつ難しいですよね。我々も代々培っていきたいと思っています。ぷよぷよはゲームの進行速度が早く、MCが難しいゲームではないでしょうか。

live氏:
そうですね。その点、早稲田祭の実況で良いのは感情的なところですね。無理に解説しようとするんじゃなくて、盛り上がりを伝えようとしているじゃないですか。その方向性でいいんじゃないかと思うんですよね。

なにか解説しようと思うんだったら、画面二つ用意して、片方では例えばGTRの形【※】、テンプレートを置いておいてパッと出すとか、そういう試みは公式の方にも必要だと思っています。

GTR

※GTR:有名な連鎖形。折り返しと呼ばれる形の一種で、特に愛用者が多い。

大会を盛り上げる“キャラクター性”

――早稲田祭で毎年行っている早大ぷよマスターズは今年で10回目ということで、ぷよぷよesports元年と銘打って競技色も打ち出そうと考えています。もちろん一般の方も多くいらっしゃる大会なので、その色は残しつつ、観戦者もプレイヤーも面白いと思える見せ方を模索しているのですが、どうすれば両立できるでしょうか。

live氏:
最近はそこまで早稲田祭に行っていなかったのですが、元から一般に見せるというノウハウは問題ないと思います。esports的な面となると選手一人ひとりのキャラクターにスポットを当てるのが重要になってくるでしょうね。応援したい人を作る意識が必要かなと。

その人の人となりがわかってこないと、ただぷよぷよの強い人と強い人が対戦しているというだけでは、見ている方は感情移入できないですよね。それが軽くでもインタビューしたら、あーこんな感じの人なんだ、大口叩くけどほんとに強いのか?みたいな(笑)。そういうキャラクター性が見えてくると、どっちを応援したいみたいな気持ちになってきたり、それを含めた実況もできるようになってくるので、ちょっとずつ色を出していくのがいいんじゃないでしょうか。

――勝ち上がってきたプレイヤーに話を聞くと。

live氏:
それがあると見てる方にも笑いが起こったりとかするんじゃないかなと思います。もちろん抜けてきた人に喋りたくないよみたいな人が多いと、ちょっと難しくなっちゃうかもしれないですけど。esportsという意味では、プロプレイヤーはそれぞれ色を出すような意識は多少なりとも持っていると思うので、それを含めて人として大会を盛り上げることができるかもしれませんね。

――プロの方をお呼びするのもいいかもしれませんね。

live氏:
ただ、ちょっと面倒なことがありますね。お金を出すか出さないか。僕としては、界隈全体はちゃんと仕事をする上ならばお金は出してほしいなって思っている質でもあるんですけれど、みんな有志で活動してきた人達が多いじゃないですか。今まで善意で、無償で活動してきたのに突然お金、みたいな話になると、多分抵抗感がある人が多いと思うんですよね。そこのバランスをどう取っていくかは難しい問題です。

プロと“お金”の話

――我々も今後のぷよぷよシーンのためには、プロにしっかりお金が入る仕組みを作ることが不可欠だと考えています。大会でもスポンサーに付いてもらったり、なんとか工面できるといいのですが。

live氏:
公式とも話をしていっていいと思います。ただ、お金の話は難しいんですよね。お金をもらうとプレッシャーになるとも思いますし。お金を回すという意識を界隈に根付かせるのも大事なんですけれども、それに対しての個人の抵抗感をなくさないといけないという話になります。結局の所、ゲームは遊びだから楽しいっていう人もたくさんいると思うので。

――プロになると、ぷよぷよに対してプレッシャーを感じてしまいそうであまり気が乗らないという声も聞いたことがあります。

live氏:
そこは住み分けができればいいなと考えていますね。お金をもらってプレーするのは、そういう覚悟があるよという人たちを中心に活動してもらうと。スタンスの違う人がお互いにどうしろというのではなく、コンタクトを取り合いながら、それぞれの向かう道が発展すればいいよねという感じでやっていくのが良いのではないでしょうか。

――日本でプロ活動が難しいのは、海外にはチップ文化があって、例えば配信に対するサブスクライブ【※】などが日常的に行われているんですが、日本ではそれが根付かないからではと思っているのですが。

※サブスクライブ:ゲームプレイ配信サイトTwitchの、好きな配信者に月5ドルを払うことで、様々な特典を得られる機能。

live氏:
どうでしょう、僕はそこまで気にしてないですけどね。結局日本でも流動的なお金の投げ方をする文化って、クラウドファンディングとかで少しずつ定着してきていると思っています。そういう文化というか、考え方ってけっこう柔軟になってきていて、今のYouTuberの投げ銭【※】とかもかなり送られてますしね。

結局一人ひとりが世界に目を向け始めれば、日本人ってけっこう周りに左右されると思うので(笑)、こういう文化もあるんだなというのが浸透していって、それが一気に振れると投げ銭しても良いんだなという感じになると思うんですよね。なので、文化を理由付けにするっていうのはちょっと甘えかなと。

すごく思うのは、esportsってまだ何もない土壌じゃないですか。格ゲー界隈や、海外だとMOBA系やFPSだったりがちょっとずつ築き上げてきたところで、まだ何でもやりようがあるんですよ。どういう風になったら、みんながお金を出したいなと思うような風潮になっていくかを模索していく段階で、それは僕らが作っていくものなので、既存の文化がどうこうっていうのはそこまで重要じゃないかなと思います。僕ら個人だと難しくても、企業とも絡めながら、どういう形がみんなに価値を提供しながらちゃんとお金をもらえるのかを考えていく必要がありますね。

※投げ銭:YouTube Liveのスーパーチャット機能。視聴者が配信者に直接お金を送ることが出来る。

S級リーグは生き続けるか

――俗に言うA級、S級のような格付けがあります。これも非公式大会であるわけですが、これらは今後どうなっていくとお考えですか。やはり本数の問題などで公式大会とは別に開催されていくでしょうか。

live氏:
もちろんコアユーザーが実力を競うための大会という位置づけのS級というのは今後も大切にされていくと思いますね。公式大会によってちょっとずつ界隈を広げていって、非公式大会の格付けにつなげていくみたいな理想が僕の中にはあるんですけれども、そのために何をすればいいかはまた難しい問題ですね。

――現状のプロ大会が本数的な意味での限界を抱えているとなると、公式大会優勝者が最強としての格付けを得ることができないのではないでしょうか。

live氏:
それは今後の盛り上がり次第だと思いますね。これはどちらかというと見ている側の問題で、50本先取をずっと見ているのってぷよらーでもきついじゃないですか。それをメインコンテンツにするとなると、どういうふうに楽しんでもらうか、興行としての大会としてはかなり難しいんですよね。そういう問題をどうクリアしていくのかによって、今後の長い本数での大会が決まってくるのではないでしょうか。

基本的にはまずは人口を集めることですね。短い本数でぷよぷよって楽しいんだなと思ってもらって、多くの人に興味を持ってもらう。そして、やっぱり2本先取や3本先取では毎回優勝する人が変わってくるし、本当に強い人は誰なんだろうと疑問を抱かせるんですよ。そういうコアなユーザーが増えていって、彼らの声がもう止められないとなったら、それは公式も考えないといけないなという話になるので。そのときにどんな形式で大会をやるか、長期的な日程でリーグ戦をやるかはまたそのときに考えることのかなと。

文化はどんどん変わっていくもので、もともとは100先が主流だったのが50先になって、今は30でもいいかなくらいの感じじゃないですか。そうやって変化していくものなので、みんなそれに適応していけばいいんじゃないかなと思います。

live氏

大学ぷよサークルは生き残れるのか

――続きまして、大学サークルについて、そして若い世代全体のこれからについてもお聞きしたいと思います。ベテランのプレイヤーも活躍する中、前回の大会【※】では高校生二人が決勝を戦いました。大学サークルとしては彼ら新世代を取り込んで盛り上げていきたいのですが、どのように活動すべきでしょうか。

※前回の大会:先述のぷよぷよチャンピオンシップ6月大会。優勝はマッキー氏、準優勝はmeta氏となった。

live氏:
若い世代に訴求するには、まずはインターネット上の活動ですね。ぷよ界って、もともとアーケード【※】文化が根強かったですよね。ところがもうプラットフォームが変わってきて、もうアーケードでレバー操作できないような若い子がたくさん出てきているわけです。そういう子たちに対してどういう環境を提供してあげられるか、というところだと思います。最近だと毎週金曜日にTOP【※】、東京理科大のサークルによく人が集まっていると聞きますが、そういう常に対戦会をやっていて集まりやすいコミュニティがあると入りやすいですよね。特に若い世代は、最初の一歩が難しいと思うんですよ。インターネット対戦は気楽なんですけど、そこからリアルに行って対戦をするというのは結構なハードルじゃないですか。その障壁をどう取り除いてあげるか、そしてそれを乗り越えてきた人をどう定着させるか、この二つですね。

※アーケード:現在プロ大会で採用されているぷよぷよ通ルールが初めて登場したアーケード版「ぷよぷよ通」。今では遊べるゲームセンターが減ってきている。

※TOP:東京理科大学のぷよぷよサークル。2016年度の大学対抗戦で優勝するなど、今一番勢いがある。公式Twitterは@rikadai_puyo

サークルの顔、コミュニティの顔

――我々もうまく障壁を乗り越えて情報を届けられていない感触を持っています。活動の様子を配信【※】などしているのですが、うまく届けられていないので、良いやり方を考えているところなのですが。

※活動配信:戦技研YouTubeチャンネルにて、毎週月曜日の夜頃に放送中。

live氏:
一番若い世代にガツンとくるのは、一人キャラクターを作ってしまうことですね。

――ここでも“キャラクター”ですか。

live氏:
戦技研と言えばこいつ、みたいな。発信したがりのキャラクターというか、愛されキャラがいるとかなり強いと思いますね。今のTOPだったらぐーくん【※】がそういう感じで、絡みやすいし、色々なところで目に留まるので、それだけでマーケティングになっているというか。結構難しいですけれどね。

※ぐー氏:TOPの代表。

――以前は戦技研にもキャラが濃い人が多かったんですよね。飛車さんがいて、あなぐらさん、Tomさん、ねるんくん……。ねるん邸配信は面白かったです(笑)

live氏:
ねるん邸があった頃が一番楽しかった。いや、僕がどストライクの世代だったのもあるんでしょうけど、こいつ面白いなってやつがいると見に行きたくなるんですよね。プロとかにかかわらず、面白い人のところに行きたくなるというところはあると思います。なんならサークル外から引っ張ってきちゃってもいいですし、単純に何をどんな雰囲気でやっているのか伝わればいいので、そのための広報となる人が一人いるとやりやすいよね、という話です。

居場所のために、外に出ていく

――サークル間での交流も盛り上げたいですね。今年は大学対抗戦【※】も復活するようなので、注目してほしいですね。若い世代と大学サークルは近いところにあるはずなので、内輪だけでなく、同じような年代のなかで知名度を上げたいですね。

※大学対抗戦:大学ぷよサークル間の大会は毎年開かれているわけではなく、前回開催は2016年だった。

live氏:
やっぱり目立ちたいなら騒がないとだめなんですよ。ぷよ界全体にも言えることなんですけれど、どうしても組織として落ち着いてくると閉じこもっちゃうんですよね。身内でやってればいいなという雰囲気になってしまって、どんどん固定メンツで集まるようになり、人が減り、無くなるという流れが、多分どこにでもあると思います。戦技研も、近々だと何をやっているのか全然わからなかった。外に出ていく、外の風を入れるという意識が大切なのかなと思います。

これは単純にサークル内だけでなく、僕らはプロとして、他のゲームの界隈にもどんどん出ていって、どんな良いところがあってどういう取り組みをしているか学んで、新規の人を増やしていく意識を持つべきだと考えています。これはどこにでも言えることで、身内で集まっているのってやっぱり楽じゃないですか。でもそこに留まっているといつの間にかその集まりはなくなるかもしれないということです。

――コミュニティ全体を活性化するためにも、騒いだほうが良いですよね。

live氏:
その通りです。だからこそ僕もいろいろな人に会ってきたりしているところです。ただ、僕はどんどん外に出ていくような活動をしていますが、他のプロがみんな外に出ていきたいとは限らないはずなので、そこは意思疎通をしながらやっていったほうが良いかなと思っています。今は一緒にやってくれそうな人を探している感じですね。

――プロらしい活動ですね。対外的な活動をやっていくにはそれなりの覚悟が必要ですよね。

live氏:
いやーけっこう大変なんですよ(笑)。外に出ていくと、今までの身内コミュニティからちょっと外れたところに行っちゃうようで、やっぱり寂しくなったりもするんですよね。例えば、プロとしてのツイッターを心がけなきゃいけないとなると、あんまりクソリプ送ってるわけにもいかないなと(笑)。そういう意識的な制約もあるんですけど、でもやりたいことがあるんだったら、それには覚悟が必要なのかなと思います。

live氏

プロの今後、ぷよぷよの今後

――ここまで様々なことをお伺いしてきましたが、改めて、今後プロとしての抱負や目標はありますか。

live氏:
ぷよぷよを発展させていくことですね。もともとぷよぷよのルールって多くの人に知ってもらえているわけで、プレイヤーが増えるルートにはちょっとやってた人が復帰することもあれば、全く知らない人もいるとは思うんですが、やっぱり真新しさが日本の国内だと足りないというのはありますよね。じゃあここから爆発的に広がるとしたら、やっぱり海外だろうと。そのために、僕は8月にラスベガスである大会【※】に行こうかなと思ってる部分もありますし。英語は全くできないんですけど(笑)。

※8月3日~4日(現地時間)に開催された、格闘ゲーム大会EVOのサイドイベントであるAnimEVO。「ぷよぷよテトリス」部門ではぷよぷよ通ルールとスワップルールの2種目が開催され、live氏はこのインタビューの後、両部門で見事二冠を達成した。

ただ、本当に海外に向けて発展していくためにはまず国内の地盤を固めないといけないですよね。結局僕らがプロとしてちゃんと活動して、収入を得ている状況になっているとアピールできないと、海外の人たちは別にこのゲームそんなにやらなくてもいいやという感じになると思うんですよ。そこで、国内外両面で進めていく必要があるわけです。国内は国内で、プロとして生計を立てると決まったわけじゃないですけれども、そういう覚悟を持っている人たちをちょっとずつ増やしていって、メディアに出てくる人も増やしていくことで地盤を固めながら、海外に対しても展開する戦略を考えていかなきゃいけないという、けっこう大変な状態なんですね。

――一人の身には荷が重いですね。

live氏:
そうなんですよ。だからもちろん僕一人でやるつもりは全然なくて、むしろ何にもできないからみんな手伝ってよくらいに考えているので、こういうのが得意だよみたいなことがあれば僕に言ってもらえれば、じゃあこういう活動したらいいんじゃないという提案ができるかもしれないですし、プロアマ問わず相談して欲しいんですね。公式でも非公式でもイベントをやりたいとか、どんどん言ってほしいです。協力してやっていくことがいちばん大事なのかなと思っていますね。

他の界隈を見ても、格ゲーならウメハラ【※】は有名だけど、別にウメハラ一人でやってるわけじゃないですよね。色々な有名プレイヤーがいて、協力してやっているので。そういう個々人の力をどんどん伸ばしていきながら、それが協力する感じになれば、界隈としては発展しやすいんじゃないかと考えています。

※格闘ゲームの有名プレイヤー。国内プロゲーマーの先駆けと言える存在。

「ぷよぷよのメジャー化を諦めていないか?」

――コミュニティが一丸となって考えていかないと、プロだけにお任せでは先に進んでいかないということですね。

live氏:
そうですね。何より、ぷよぷよって長年やってきたゲームなので、諦め半分の人が多いと思うんですよね。ここまでやってきて、この程度の盛り上がりだから、今後そんなに盛り上がらないだろうみたいな。このまま細々とやっていくんだろうなみたいな感じで考えてる人がけっこう多そうなので、そこに僕が切れ目を入れてやんなきゃと(笑)。多分みんなそんなに動かないだろうなと思っているので、僕が色々と精力的に活動しているというのもありますね。

――我々もぷよぷよはまだまだ可能性のあるタイトルだと思っています。コミュニティの一員として、どんな企画をしていけばいいでしょうか。

live氏:
僕のもとにもいろいろと企画が入ってきたりしているんですが、今は界隈外も巻き込んで活動するというのが面白いかなと思っています。最近ではけっこう麻雀界隈との関わりがあるので、プロになった直後に麻雀の人とネットラジオをやったり【※】だとかしました。色んな界隈と接点を持っておいて、そこから全然知らなかった知見を得たりしながら、もしかしたらこんなイベントが出来るんじゃないかみたいに考えていく形になるのかなと思っていますね。

※ネットラジオ:メカゼットン氏(@mekazettonn)との対談。ぷよぷよプロ発表直後ということで、esportsという視点で麻雀とぷよぷよの比較をするという内容。YouTubeリンクはこちら

――やはり外向き志向というのがキーですね。

live氏:
もちろん地盤が固まっていないと外に出ていけないというのもあると思うので、どこを優先的にやっていくかは順番がありますけれども。僕はもう界隈全体の広報みたいな感じで動いていくつもりでいます。

どっちかと言うと僕もある程度、取っ掛かりがないと話しかけられないタイプなんですよ。例えば格ゲーマーとかにesportsについて色々と聞きたい気持ちはあるんですけど、きっかけがない。そのためにEVOに行くんですよ。そこで名刺を配って、こういうぷよぷよのプロやってますと。

まず取っ掛かりを作って、次も会いましたねと話ができますよね。海外のぷよらーも来るし、日本の格ゲーのプロゲーマーもたくさん来るわけだし、本格的に活動していくなら、ここで挨拶しない手はないでしょって思うじゃないですか。絶対にいろんな情報が手に入るし、人脈も手に入るし、そこは抑えておくべきかなと。外に対して、自分が誇れる活動をしておけば、大分話しやすいんじゃないかなと思いますね。

必要なのは“解説者”

――格ゲーのように、大きなタイトルになるのは個人的にも夢見ています。大会でも、観るだけでも面白くて盛り上がれるゲームではありますよね。観戦勢の裾野を広げることも重要では。

live氏:
やっぱり、やるプレイヤーと観るプレイヤーの盛り上がりは多少違うので、観る側に対するサポートをどうするかは今後重要なところだと思います。最低限の知識をつけてもらうという意味合いでも、僕らの実況解説が必要ですし、今は観客を増やさないと何も始まらないという状況ですからね。そのための活動をどうするかはパッと答えが出るものではないんですけれど、そういうところのためにぷよキャン【※】とかもできたのかなとは思っていますし。

※ぷよキャン:プロ化にあわせて公開されたぷよぷよプレイヤーのためのポータルサイト、ぷよぷよキャンプ

――我々プレイヤー側としても、一般の観客側としても、まずは人を増やさないと駄目なんですよね。

live氏:
すごく勘違いしやすいのは、僕らってすごく狭いところで活動してきたから、そこでの盛り上がりがすべてだと思いこんじゃうところがあるんですよね。S級リーグ【※】はめちゃくちゃすごかったけど、周りには全然認知されてないですし。そういうところの意識をちょっとずつ取っ払っていかないと発展していくのは難しいかなと思っています。

※S級リーグ:アーケード版ぷよ通の頂点を決める非公式大会として、プレイヤー間で最高の権威を誇っていた。現在はハードの世代交代が行われ、3DS版「ぷよぷよクロニクル」のオンライン大会おいうリーグのS級リーグのことを指すように変わりつつある。

前回の第二回のぷよぷよチャンピオンシップについても、あれをちゃんと理解していた人ってかなり少ないんじゃないかと思うんです。僕が15連鎖とか打って、会場は盛り上がったんですけれども、それはぷよぷよが分かっている人だから盛り上がったのであって、どこからがすごいのかってパッと見だけでは分かりづらいはずなんです。よく分かんないやって思ってる人も絶対たくさんいるので、そこをうまいことサポートするような方法をもっと考えていかないと、身内コミュニティの枠に収まってしまうのかなという危機感はありますね。

――うまく外に分かりやすく発信、解説が出来る人材が求められていますよね。

live氏:
そこなんですよ。僕もチャンピオンシップの解説記事なんかを時間があれば書きたいなとは思っているんですが、今ちょっと忙しくて。もともと僕、自分のブログで覇王の慧眼【※】とかやっていたので、それの体裁でひとつ、試合を解析していくようなものをやりたいなと。

※覇王の慧眼:強豪プレイヤーの打ち筋を詳細に分析し、紹介するシリーズ。第1回はこちら

解説技術を鍛えようと思って最近配信をやっている面もありますし、こないだもeスポーツMAX【※】の大会があったのでそこで解説をやってきたんですけど。

※eスポーツMAX:TOKYO MXにて放送されている番組。ぷよぷよ大会もたびたび開催されている。

――そういった役割は公式に期待するよりも、プレイヤーがやるべきことですね。

live氏:
基本的にプレイヤーから出てくるものだと思います。一部のプレイヤーが、僕はこういうのが出来るからこういう仕事をしますよという風になっていくのが正規ルートなんじゃないでしょうか。本来は僕はそっち側に集中したほうが良いんじゃないかなという気もするんですけどね。

僕が解説にあっているのは、僕のプレイスタイルが人読みを多用するところがあるからだと思っています。この人はこういうプレイヤーなんだというベースの知識があるので、じゃあきっとこういう動きをしてくるなみたいな感じで、見ている人視点の解説ができて、感情移入させる解説ができるというところが強いのかなと。覇王の慧眼もどういうプレイヤーなのかを主眼に書いていた部分が多かったですし。そういう意味では自分は解説に向いているなとは思うんですが、そういう人がプロプレイヤー中心にもうちょっと出てきて欲しいなとは思います。

――一人で出来ることには限界がありますよね。解説にしても、ロールモデルをちょっとずつ見せて、あとはバトンタッチしていけば良いのではないでしょうか。

live氏:
そうですね、そのロールモデルを見せる段階かなと思っています。とりあえずやってみて、僕もやってみたいなって思った人に、じゃあ君やってみようよって投げるつもりなので。いま一番誰もできていないのは広報の役割で、僕は多分それに注力しなきゃいけないですから。広報にしても、個人的にプロプレイヤー間でいろいろ話をしたりはしているんですけどね。くまちょむ【※】と飯食いに行ったりとか(笑)。

※くまちょむ:TV出演も多いベテランプレイヤー。プロ初期メンバーの一人。Twitterは@kumachom

――くまちょむさんは今一番メディア露出をされていますね。

live氏:
ただ、彼はあんまりSNSとかの発信が得意なタチではないので(笑)。もちろんやることはきっちりやってくれるし、看板としての役割はちゃんと果たしてくれる方です。でも、僕の上の世代の方たちって、あんまり引っ張っていくタチではないんですよね。プロとしての仕事はしっかりとやってくれるけど、どういうことを思っているのかあんまり表に出してくれないので、そこは僕が通訳していかないとと思っています。

プロ発足前夜の葛藤

――プロのみなさんがプロ化を期に、何を考えているのか単純に聞きたいというのが今回の企画の大きなきっかけの一つでした。liveさんはプロになって、なにか実感はありましたか。

live氏:
そもそも僕の場合は、プロになるかならないかというのを、まずメールで確認されたんですよ。最初の推薦メンバーだったので。

そのときに考えたのが、プロになると、色々とできないことが出てくるなと。今まで僕はアマチュアでも結構やんちゃな方で、ちょっとブラックな発信とかもしていたんですね。初心者狩りとか、自由落下【※】とか、そういうゲーマーとしての汚い部分も見てきたのに、その中にいる若い子たちと壁ができちゃうのかなって感じたんですよ。プロになってしまうと、どうしても綺麗な発信をしないといけない。だから、なんかこいつ綺麗事言ってるなと言われるようになってしまって、今絡んでいるような若手と気軽に接することができなくなるんじゃないかという心配があったんですね。

※自由落下:相手に大量のお邪魔ぷよを送り、勝利が確定した場面で次の連鎖構築を放棄し、無操作状態にする行為。状況にもよるがマナーが悪いとされる。

僕はどっちの道を取るべきかなってちょっと悩んでたんですよ。プロになる人はもともとちゃんと活動していた人たちに任せてしまって、僕はそのプロとアマチュアの架け橋をやるべきなんじゃないかなと。でも、単純に今プロになって、業界を引っ張っていってくれる人いないなと思って(笑)。

――架け橋どころか、架ける対岸がないと。

live氏

live氏:
じゃあ僕プロになるしか無いなっていう(笑)。消去法でプロになったみたいなところがあるんですね。そのこともあって、プロの中でもけっこう覚悟を持って参加したほうじゃないでしょうか。以前にも色々と揉め事があったときに、僕にも飛び火して叩かれていた立場なのに、じゃあお前プロになるのかよって言われることもあるだろうなと思っていたりもしますが、それでも僕は動じないからと。それくらいの覚悟はないと多分プロにはなれないなと最初から思っているので。

だからこそ今自分から色々と活動する気持ちのベースができているというのはありますね。プロというのは個人が変わるきっかけみたいなところかなと思っていて。立場をもらって、その人がどう考えるか。これは公式側も見ていると思うんです。プロの肩書をあげたら、このひとはちゃんとやってくれる人なんだ、じゃあ色々任せてみようという感じで、なにか仕事をもらえたりするかもしれないですしね。そんな感じでプロとしてのぷよらーが培われていくのかなと感じています。

未来のプロへのメッセージ

――最後に、これからプロを目指すプレイヤーに向けて、なにか一言いただければ。

live氏:
今のところ、プロぷよらーっていうと生計が立つようなイメージが全然ないと思うんですけれど、それでも僕らの頑張り次第でまだまだ伸びる業界だなっていうのはすごく思っています。僕と一緒に頑張ってくれる人が一人でも増えてくれたら、そういう夢が近づくんじゃないかなと。夢を信じてくれる人たちを僕は待っているので、ぜひ一緒に頑張りましょう。


直近の大会から界隈の未来まで、あらゆる話題で盛り上がった濃密なインタビューとなった。live氏のあくまで客観的に、自身とぷよぷよそのものを広い視点から見つめる思慮深さが伝わってくると同時に、一人であまりにも大きな夢を背負い込むことへの不安も覗かせた。

いまだプロ発足から数ヶ月であり、これまでのぷよぷよシーンが大きく変わるにはまだまだ時間がかかるだろう。しかし、今このチャンスを逃せば、ぷよぷよはesportsの波に取り残されてしまうかもしれない。そんな焦りともいえる危機感を感じさせられた。

とはいえ、これまで20年以上脈々と受け継がれてきたユーザーコミュニティの強度は確かであり、今回のプロ化は間違いなく大きな一歩ではある。今後の展開次第で、このタイトルに大きな化学反応が起こり、先人たちの努力が一斉に開花する未来を想像してならない。